スコ猫くまきち日和+ -2293ページ目

森村桂さんが自殺?

作家・森村桂さんが亡くなった。
子供のころ、超人気作家というイメージだった森村さん。
テレビにもよく出演されていた。
押しも押されぬ大作家だった。
本屋にいけば、いつも森村さんの作品が何冊も並んでいた。
森村さんの名前を聞かなくなって、何年も経つ。
晩年は鬱病だったという。

書くことは、癒しになると思っている。わたしは自律神経失調状態のとき、書くことで救われた。いつも小さなノートを持ち歩き、街中の騒音や人混みに耐えられなくなると、喫茶店に書けんでノートを開き、書きまくった。今、気持ち悪いことや目が回ること、周囲がどなふうに自分に牙を向けてきたかを。
書いているうちに落ち着いて、なんとか帰りのバスに乗ることができた。
そのことが自分自身を見つめる結果になった。
わたしは書くことで救われた。
けっして人さまに見せられるものではなかったが、ただ、書くということで救われた。
一度辞めたものを書く仕事に戻ったのは、そんな自分に気づいたからだった。

今年夏、シリーズ人間で書いた飯島夏樹さんは余命半年と宣告されてから、猛然と小説を書き始めた人だ。プロのウインドサーファーであり、エッセイなどは書いていたそうだが、小説はまったく初めてだったという。その小説がすごくいい。アイデアがどんどん湧いて、書くのがおいつかないほどだそうだ。書いているうちに元気が出て、鬱状態から完全に抜けられた。
ガンの苦しみも相当に癒されたようである。
彼は「作文療法」と呼んでいた。抗ガン剤よりも放射線よりも、カラダに利くと実感していた。

森村さんにとって、書くことが癒しにならなかったということがとても悲しい。
今年、鷺沢萌さんも野沢尚さんも亡くなった。中島作家の自殺が相次いだ。
作家は孤独に陥りやすい。自分だけひとりで構築した世界を常に世に問われるのだから。かつては、そこをフォローする体制があったと思うけれど、今はどうだろう。
本が売れなくなって、左うちわの印税生活など望めなくなった。
消費されるだけの才能。売れること、有名なことが最優先される。
資本主義経済下ではいたしかたのないことかもしれないけれど。

森村さんのご冥福をお祈りします。